採用サイトへ
動画配信の今を伝えるエンジニア情報サイト
Technology
2022.10.14

ストリーミングの歴史

ストリーミングの歴史

# ストリーミング # ストリーミングの歴史 # 業界動向
SHARE US

ストリーミング(動画や楽曲のインターネット配信)は、今や日常生活に溶け込んだサービスになっていますが、今回、その歴史について紹介したいと思います。

【執筆者紹介】

鍋島 公章 プラットフォーム本部 エグゼクティブマネージャー  / メディアコンサルタント

1995年、米国駐在時にWebサーバの大規模キャッシングについての研究開発を行って以来、インターネットにおける各種メディアの大規模配信について、サービス立ち上げ、研究開発、運用と全方面について関わる。

ストリーミングの現状

まず、動画について国内市場規模(2021年)を見ると、物理レンタルの731億円に対し、ストリーミングを使ったビデオレンタルであるVoDは4,863億円(※1)となっており、圧倒的にストリーミングが大きくなっています。また、ビデオレンタル実店舗の閉業(※2)も進んでおり、ビデオを借りるための一番手軽な方法はストリーミングという時代です。

 

そして、音楽については、日本ではまだCDの方がマーケットとして大きい状況(CD等約1,279億円に対して音楽配信895億円)(※3)ですが、世界全体を見ると、CD等の物理媒体はすでに音楽市場全体の19.2%しか占めておらず、音楽配信はその3倍以上である65.0%(※4)を占めています。日本ではコレクションとしてのCD所有文化があるため、ストリーミングは音楽産業の主流とはなっていませんが、世界を見るとストリーミングが音楽産業の主流です。

 

このように、ストリーミングは日常生活に溶け込んだサービスになっています。またトラフィックという視点でも、ネットトラフィックの6~7割程度はストリーミングといわれており(※5)、電気通信業(国内約15.2兆円 ※6)の需要を支えるサービスとなっています

 

ただし、ストリーミングも急に普及したわけでなく、いろいろありました。今回は、この歴史を振り返りたいと思います。

ストリーミングの歴史

商用ストリーミングの開始(1995~)

商用インターネット接続が始まったのが1995年ごろですが、それとほぼ同時に、米国ではラジオ局のインターネット配信が始まりました。また、国内を見るとイベントのネット配信がこの時期に行われています。単発ものとしては、坂本龍一ツアー(1995,1997)、村山総理大臣念頭所感(1996)が代表例で、現在も続くシリーズとしては、甲子園全国野球大会の中継(1997~)が有名です。また、1997年には、国内ストリーミング企業としてJストリームが創業しました。また、アダルト向けコンテンツサービスであるX Cityがストリーミングを始めました(新しいメディアはまずアダルトからという流れです)。

音楽配信・VoD黎明期(1999年~)

ライブ中心に進んでいたストリーミングですが、1999年ごろから新しい動きがはじまります。まず、1999年に、国内初の有料音楽配信サービスであるbitmusicが始まりました。ただし、このころのサービスは、現在主流である楽曲のストリーミング視聴ではなくダウンロードサービスでした。しかし、このインターネット向け音楽配信は10年ぐらい不調でした。一方、ガラケー向けの音楽配信は、2001年にはじまり、2010年ぐらいをピークに1,000億円を超えるマーケットまで成長しました。

 

 

動画については、2002年に幾つかのVoDサービスが始まりました。そして、2004年ごろに黒字化を達成するサービスが出ています。ただし、現在のようなサブスクリプションではなく、単話やシリーズ毎の都度課金です。

インターネット黒歴史の時代(2005年ごろ)

一方、2005年ごろはインターネットトラフィックの約半分がP2Pトラフィック(※7)であり、交換されるコンテンツのほとんどが違法な映画や音楽ファイルであったといわれています。また、ユーザー投稿型のサービスとして、YouTubeが2005年、ニコニコ動画が2006年に開始されましたが、これらについても違法アップロードされたコンテンツが多い状況でした。つまり、この頃は、インターネットを流れるコンテンツについて「違法コンテンツ>正規コンテンツ」という状況で、インターネットは不正コンテンツの流通のためにあるといわれていた時代です。インターネットの黒歴史であったといえます。

本格的な始動(2007年~)

2007年ごろから、現在まで続くサービスが開始されます。まず、2007年、NetflixがコアビジネスをDVDの配送レンタルから、VoD型に切り替えました。そして、2008年には、フジテレビが見逃し配信を開始し、NHKもNHKオンデマンドを開始、そして、Spotifyが音楽サブスクリプションを開始しました。さらに、2010年にはラジオのネット配信であるradikoが開始されています。

そして、主要サービスに(2018年ごろ)

本格的なストリーミングサービス始動時期から約10年が経過した2018年、国内でも有料動画配信の市場規模がビデオレンタルを超えました(1,542億円に対し1,980億円 ※2)。そして、一時期は違法コンテンツの巣窟だったYouTubeについても、タレント事務所やレコード会社による正規チャンネルの増加、ユーザが制作したコンテンツの本格化などが進み、正規コンテンツが増え、広告サービスとして黒字化しています。

これから

ビデオレンタルについては、マーケットを置き換えてしまったストリーミングですが、まだまだ伸びる余地があります。例えば、通信と放送の融合による放送コンテンツの通信伝送、日本ではなかなか進んでいないマーケットですが、米国ではCATVのインターネット化(vMVPD)という形で、約1,400万世帯(※8)が通常のインターネットを使い、CTV(コネクテッドTV)やスマートフォンなどを使いCATVを見ています。


そして、現在の国内テレビ広告の市場規模は1.8兆円程度(※9)ですが、ストリーミング広告はまだ0.4兆円程度(※10)しかありません。しかし、ストリーミングは、20代以下において、テレビよりも接触時間が長いメディア(※11)となっています。つまり、この世代が成長するにつれ、接触時間の長いストリーミングに広告費がシフトしていくと考えられます。さらに、ストリーミングは、そのインタラクティブ性やパーソナライズ性を活用することにより、広告のみならず販促マーケット(市場規模約15兆円、広告の2倍程度)の取り込みも可能な技術です。

まとめ

ストリーミングは、現在、日常に溶け込んだサービスとなっていますが、産業としてまだまだ伸びる余地があります。しかし、ストリーミングのマーケットや技術を理解している人材は決定的に足りていません。新しく飛び込む価値のあるマーケットだと思います。

注:

求人情報
関連記事
   
People
2021.07.05
動画配信サービスを開発するJストリームが目指すビジョン