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企業の枠を超えたリーダーシップ経験で、若手は圧倒的に成長する _「JAIPA Cloud Conference 2023」実行委員 特別対談

企業の枠を超えたリーダーシップ経験で、若手は圧倒的に成長する _「JAIPA Cloud Conference 2023」実行委員 特別対談

この記事に登場する人

羽岡 隆平 氏

「JAIPA Cloud Conference 2023」実行委員長
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 プラットフォームサービス本部

2020年にエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズに新卒入社し、現在4年目。実務ではセールスエンジニアとして、自社クラウドサービスのサービス提案から技術支援までを手がける。クラコンには2021年から参加し、一度実行委員を経験。2023年に初めて実行委員長を務めた

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今井 宏謙

「JAIPA Cloud Conference 2023」実行委員
株式会社Jストリーム プラットフォーム本部

ネットワークエンジニアとしてJストリームに新卒入社し、現在4年目。インフラの設計・構築・運用に携わり、現在はテックリードとして現場を支えている。今年、クラコン実行委員会に初参加

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高見澤 信弘

インタビュアー
株式会社Jストリーム プラットフォーム本部 アーキテクト

ネットワークエンジニアとしてJストリームに新卒入社し、現在17年目。インフラ面での技術調査、技術方針策定等を手がける。「JAIPAの集い」プログラム委員、IPoE協議会 IPv6地理情報共有推進委員会幹事等も務める

年に1度開催される「JAIPA Cloud Conference(通称クラコン)」。各省庁や世界的大手IT企業などそうそうたる企業・団体の有識者が登壇し、クラウド業界の未来について語る一大イベントです。このイベントの運営を支えているのが、JAIPA会員企業から集った若手で構成される実行委員会です。毎年のイベントテーマやプログラムの企画から、スポンサー募集、登壇者の人選、会場の決定、集客、配信準備に至るまで幅広い運営業務を担います。

 

第11回を迎えた2023年は、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ新卒入社4年目の羽岡隆平氏が実行委員長に就任。そしてJストリームからは同じく新卒入社4年目の今井宏謙が配信委員として実行委員会に参加しました。9月にイベントを終えた2人は、クラコンの魅力や実行委員での経験をどのように感じているのでしょうか。Jストリーム・アーキテクトの高見澤信弘がインタビュアーとして話を聞きました。

参加申込者1,000名超のビッグイベント「JAIPA Cloud Conference」

 ―― まずは「JAIPA Cloud Conference(通称クラコン)」の概要を教えてください。

haneoka
羽岡氏

クラコンは、JAIPA(一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会)のクラウド部会が手がける年に1度のイベントです。クラウドサービスプロバイダ(IaaS/PaaS/SaaS) 、システムインテグレータ、ソリューションベンダーをはじめとしたクラウド事業にかかわる方が、クラウド業界の “未来” について知見を深めるイベントです。平たく言うと、クラウド業界の方に向けた講演会やセミナー形式のイベントですね。

 
羽岡氏
haneoka
羽岡氏

今年は、クラウドを軸に3つのテーマ「AIやWeb3等の新しい技術がもたらす社会/ビジネス変化」「グローバルにおけるインターネット運営体制の今」「ランサムウェア等の脅威へのサイバーセキュリティ対策」に基づき、テクノロジーが社会へ与えるインパクトに語り、共有しあうプログラム構成にしました。

 

クラコンは、JAIPAやJAIPAの会員企業から選出されたメンバーを中心に“手作り”でイベントを行っている点も、大きな特徴と言えます。

JAIPA Cloud Conference 2023 サイト

 ―― 毎年そうそうたる有識者が登壇して注目を集めていますが、イベント規模はどのくらいなのでしょうか?

haneoka
羽岡氏

参加申込み者数は毎年1,000名を超えており、2023年は過去最高となる1,200名弱のお申込みをいただきました。例年、名だたる大手企業にスポンサー協力をいただいております。

 ―― 今井さんは、今回初参加だったと思いますが、イベントはいかがでしたか?

imai
今井

私は他のITイベントにもよく参加するのですが、クラコンは幅広いテーマを扱っているのだなと感じました。クラウド関連のイベントというと「この技術はこういう仕組みで動いている」といった技術寄りの話が展開されることが多いのですが、クラコンでは「この技術はこうあるべき」「クラウド業界のこれからの展望」といった経営的な話題も多く、いつもとは違う話を聞くことができて面白かったですね。

haneoka
羽岡氏

クラコンは経営者や管理職の参加者が多いことも大きな特徴なので、仰るとおり技術に関してだけでなく、政策関連や学術的視点、海外動向など幅広い話を聞くことができます。

今井

医療業界のサイバーセキュリティの話など、興味深いセッションがたくさんありました。

イベントテーマ設定から登壇者の選出まで、若手実行委員が采配を振るう

 ―― 実行委員会は、イベントの中でどのような役割を担うのですか?

haneoka
羽岡氏

基本的に運営業務のほぼすべてを担います。例を挙げると、イベントテーマの立案、ご登壇いただく有識者の選出やトークセッションテーマの企画、スポンサー獲得、対外的なPRや広告媒体の選定、配信用プラットフォームの設計・構築……など。最終的な確認・判断は企画委員が行いますが、そこに行き着くまでの一通りの計画・実行は私たち実行委員会で行います。

 

2023年は9月にイベントが開催されたのですが、前年の11月から骨子の検討が始まり、年明け1月から具体的な準備を進めていきました。

 ―― 実行委員はどんな方で構成されているのでしょうか?

羽岡氏

JAIPA会員企業に所属している方が対象で、各企業より立候補いただいています。新卒入社4年目の私がベテランと言えるほど若手の実行委員が多く、基本的に社会人1〜3年目のメンバーが中心です。高専卒1年目の20歳の方も参加していますよ。最近はリモートワークが中心で人とのつながりが希薄になっている中、同世代の仲間と出会えるというのは本当に貴重な経験だと思います。

 

今年の実行委員会メンバーは21名です。加えて、実行委員会OB、OGを中心としたサポーターの皆さんがいらっしゃいます。

 ―― お二人が実行委員会に入ったきっかけを教えてください。

羽岡氏

私が初めてクラコンに携わったのは入社1年目の冬頃でした。直属の上司がJAIPAとの親交が深く、「若手枠で参加してみないか?」と声をかけられたのがきっかけです。1年目は、スポンサーを獲得するチームに入りました。

今井

私も羽岡さんと同様で、上司から声をかけてもらったことが今回の参加きっかけになりました。本イベントはストリーミング配信しまして、Jストリームはストリーミングスポンサーでした。今回、私は、実行委員会の配信委員という立場で、当日のストリーミング配信を行いました。

 ―― 実行委員長として活動する中で、大変だったことや難しかったことはありますか?

haneoka
羽岡氏

まず、実行委員長の一番大きな仕事はチームビルディングです。クラコンの実行委員は毎年さまざまな企業から新しいメンバーが入ってくるため、年ごとに新たなチームを作り上げる必要があります。その際に、意見を言いやすく、自主的に参加してくれるような仕組みづくりを行うのが実行委員長の役割です。逆に言うと、きちんとチームビルディングさえできれば9割は役目を果たしたといっても過言ではありません。

 

しかし、私はマネジメント経験がほとんどなかったこともあり、最初はメンバーにタスクを任せることができず、細かい仕事も自分が引き受けてしまいがちでした。必要以上にメンバーに気を遣ってしまい、そのせいでチームがうまく回っていなかったんですね。そんなときに企画委員を務める大先輩の方から教えていただいたのが「実行委員長というのは、手を動かしたら負けだ」という言葉でした。メンバーにタスクを振らないということは、自分がマネジメントの仕事を放棄していることと同義だと、その言葉で初めて気づきました。

 

そこから「手を動かす仕事は極力メンバーにお願いする」というマインドに切り替えたところ、徐々にチーム運営が円滑に進むように。また1人ひとりに仕事を任せることで、信頼関係も構築されていきました。

羽岡氏

クラコンの実行委員長は、確かにチームを率いるトップではあるのですが、その上には私たちの活動を見守ってくれる企画委員をはじめとした頼もしい監督者がいます。安心できるバックアップがある中で、チーム運営に必要なマネジメントの経験値を積めるのは、クラコン実行委員会に参加する大きなメリットだと思います。

imai
今井

「イベントが失敗したら自分の責任」といった大きなプレッシャーを感じずとも、きちんとマネジメント経験が得られるというのが魅力的ですよね。

 ―― チームビルディングを行うために意識していたことがあれば教えてください。

haneoka
羽岡氏

毎月定例ミーティングを行っていたのですが、オンラインだけで済ませるのではなく、より深く交流できるようオフライン+オンラインのハイブリッド型で実施していました。また定例会の後には懇親会もセットで開催して、皆で気兼ねない雰囲気の中で会話ができるようにもしました。すぐに皆が打ち解けて仲良くなっていたので、この仕組みにして良かったですね。

 

もう1つ意識していたのは、1対1で会話する時間を設けることです。2、3分の短い時間でもいいんです。実行委員の中には「自社から参加するのが1人で、気軽に話せる相手がいない」という方もいます。自分がそんな方のハブになれたらという思いで、一人ひとりと話すようにしていました。

imai
今井

確かに、羽岡さんのおかげでメンバー全員と話しやすい環境になっていたなと思います。

 ―― 会社が違う人と一緒にプロジェクトを進めるとなると、「自社内の常識が通じない」「コミュニケーションの齟齬が生まれる」といった大変さを感じそうだなと思いましたがいかがでしたか?

haneoka
羽岡氏

その大変さはほとんど感じなかったですね。というのも、若手メンバーなのでそこまで企業文化に染まっていないんだと思います(笑)。皆さん柔軟な思考を持っていて、コミュニケーションは取りやすかったです。

今井

私も同じです。普段の仕事ではイベントスタッフ業務は行わないので、皆同じスタートラインに立っている感覚でしたね。その一方で、私は配信チームに所属していたため普段に近い仕事もしたのですが、自社とは違う設計方針や技術の使い方が学べてとても勉強になりました。社外の文化に触れて自分の選択肢も広がったので、良い経験ができたなと思います。

実行委員を経験して実感した「視座の高まり」

 ―― クラコン実行委員を経験したことで得られたものがあれば、教えてください。

羽岡氏

先ほどの話にもつながりますが、チームやプロジェクトを率いるために必要なマネジメント経験が得られたのは大きかったです。

 

おかげで、本業のセールスエンジニアの仕事をする上でも「プロジェクトを一番円滑に進めるためには?」という観点で考えられるようになりました。その結果、自分が行うべき仕事と誰かに任せるべき仕事の判断が付くようになり、担当業務のスピード感が高まったように思います。

今井

エンジニア職は、自分で全部やろうと思ったらできてしまう仕事です。他の仕事以上に「人に任せない」という選択肢を容易に選べてしまうんですよね。だからこそマネジメントを経験することが必要なのですが、「マネジメント経験は重要」と言葉で聞くだけでは全く響かなくて(笑)。いざ経験してみて、やっとその意味が分かるんです。

 

マネジメントを経験することの魅力を一つお伝えすると、まず仕事において「見るレイヤー」が変わります。メンバーとしてしか仕事をしていないと、目の前にあるタスクを終わらせることに集中してしまいます。しかしマネジメント経験を経るとプロジェクトの全体像を見るようになり、さらに来年、再来年のことも見据えられるようになります。この視座の高まりは、実際に経験してもらわないとわからない部分だと思います。

 ―― 具体的に「実行委員の経験が実務に活きている」と実感する瞬間はありますか?

今井

何かのタスクを任されたときに実感しますね。たとえば「このプログラムを来週までに書いてほしい」と依頼を受けたときに、素直にそのプログラムを書く前に「このプログラムってどういう使い方をするんだっけ」「この目的なんだとしたら、書くよりも買う方が効率的なんじゃないか?」と、目的をもとに判断ができるようになりました。

 

反対に自分がプロジェクトを動かす上では、目的から逆算してタスクを生み出すことが増えてきたように思います。この経験はかなり実務で活きていますね。逆に実務で実践することで、イベントの際にも同様の動きができるようになりました。相乗効果でいいループが生まれました。

 ―― 実行委員を経験する前と後では、どのような変化がありましたか?

羽岡氏

私はセールスエンジニアなので、お客様からサービス紹介のご依頼をいただくことがよくあります。以前は、お客様が依頼される言葉を忠実に形にしていました。しかし、実行委員会で目的思考の場数を踏むなかで気が付いたんです。うかがった課題をそのまま鵜呑みにしていいのかな、課題は他にもあるんじゃないか、アプローチ方法は正しいのだろうか、と言葉のその先にある意味を推測し、目的から今すべきことは何かと考えられるようになりました。

羽岡氏

新人時代の私は上司から「お客様に打ち合わせ設定のメールをしておいて」と言われたら、何より「メールを送る」という目先のタスクを重視してしまいがちでした。そしてお客様から返信がなく、上司へその旨を報告する……という仕事の仕方でした。

 

上司の意図は、お客様にメールすることではなく、商談に必要なお客様の状況理解ですよね。実行委員を経験してから、このような「自分で勝手にタスクを分解して、仕事をした気になる」という動作が完全になくなりました。

 

クラコン実行委員の経験で、成長の速度は一気に上がったなと思います。イベント運営の中では、企画委員の方々によく今後やりたいことを相談して判断を仰いでいたのですが、決まって「それをやる目的は何?」と聞かれていたんです。何度も何度も聞かれると、さすがの私でも目的を考えるクセがつきました。当然、判断を仰ぐための材料もそろえ、自分の考えを整理して臨みました。

 

社内だけに視点を集中しているとどうしても凝り固まってしまいます。クラコンの企画委員の方や関係者の皆さんは、責任ある役職者の方ばかりなのに、とてもフラットに会話できるんです。社外の文化や考えにこれだけ多く触れられることは、なかなかない貴重な機会でした。

今井

仕事って、よく考えると“エリアの大きさ”が違うだけなんじゃないかなと思います。たとえばエンジニアが、プログラムを書く際に「Javaで書くかPHPで書くか……」と考えるのと、「プロジェクトを成功させるためにこのタスクを行うか、このタスクにするか……」と考えるのは、考える枠の大きさが違うだけで考え方は同じです。その枠を広げるためには、何より実践が欠かせません。逆に経験さえ積んでしまえば、もちろん成長スピードは人それぞれだとしても必ずできるようになるのではないでしょうか。自分には向いていないと思う仕事でも、実際にやってみたら「今までと同じだ」と発見することも多いと思いますよ。

 ―― 幅広い業務を手がけるのは大変だろうなと感じたのですが、実行委員になることを躊躇した瞬間はありませんでしたか?

羽岡氏

それはもちろんありましたよ! 「今後1年間は絶対大変になる」ってわかりきっているんですから(笑)。正直私も、まわりの方に背中を押してもらわなければ辞退していたと思います。しかしイベントが無事に終わって任務を全うしたとき、自分で言うのもなんですが「確実にひと回り以上成長した」という実感がありました。そのためこれからクラコン実行委員会に参加する若手の方々には、深く悩みすぎずに挑戦してほしいです。大変という思い以上に得られるものが必ずありますから。

今井

むしろ、この活動に自分から飛び込める人は少ないと思います。私は、2022年に開催されたJANOG49で企画編成委員長(Org Chair)として運営に携わりました。その際は、正直に言うと私も、背中を押されたというより「逃げ道を塞がれた」という感じでした(笑)。ですが、逃げ道を塞ぐという責任ある行為をしてくれる上の方々は、必ずあなたを最後までフォローアップしてくれるはずです。だから安心して、飛び込んでみてほしいなと思います。

羽岡氏

そうまでして自分を選んでくれるということは、少なからず自分に期待してくれているということですからね。自信を持って挑んでほしいです。

 ―― 最後に伝えたいことがあれば、お願いします。

羽岡氏

ここで言うことではないかもしれませんが、実行委員として協力いただいた皆さんに対して、心から「皆さんのおかげでした」と伝えたいです。この言葉、リーダーであれば誰でも口にすると思うんですが、本当に心の底からそう思っています。それぞれの個性がうまくつながった今年のメンバーは、過去最高だったと私は思っています。

今井

私はクラコンの他にもいろいろなイベントに参加してきたのですが、クラコンでまた自分の幅を広げられたなと思います。本業との兼ね合いもありますが、今年1回だけで終わらせるつもりはないので、次回もその次もぜひ参加させてもらいたいです。

 ―― お話をうかがい、お2人がイキイキと活動する姿が目に浮かびました。業界発展のために、これからも一緒に盛り上げていきたいですね。Jストリームとしても、また私個人としても、微力ながら引き続き尽力していきたいと改めて思いました。本日はありがとうざいました。

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