JAIPAの集い in 鳥取とは
5/29(木)、30(金)の二日間、一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会様の主催による「第59回JAIPAの集い in 鳥取」が鳥取市のとりぎん文化会館で行われました。鳥取での集いの開催は初めてとなります。参加者の中には鳥取に初めて来た!という方も。
今回も170名もの方々に参加いただき、鳥取県のデジタル基盤整備の現状や鳥取情報ハイウェイ、ローカル5Gを使ったスポット通信、コネクテッドカーでの通信や遠隔型の自動運転の話まで、幅広い講演が行われました。
アーキテクトの高見澤がプログラム委員として参加しましたので、レポートいたします。
放送100年を意識したプログラム
今回の集いのポイントは、放送ネタを2点入れさせていただいたことです。2025年は日本で放送が始まって100年という記念の年です。当時はラジオ放送ですが、現在はテレビやラジオもインターネットの上で配信される時代となりました。
そんな中で、AbemaTV CTOの山中勇成さんと私で「地域ISPとコンテンツ配信」というセッションを行い、昨今のコンテンツ配信についてざっくばらんにお話をさせていただきました。
また最終日には、「地上テレビジョン放送のブロードバンド等代替に関する検討状況について」と題して、総務省 情報流通行政局 放送政策課 外資規制審査官 細野慶介氏にご講演をいただきました。
「地域ISPとコンテンツ配信」での登壇
私の方からは、2024年のコンテンツ配信を振り返って、マルチCDNやIPv4/IPv6のアクセス割合をはじめとしたデータや地上波サイマル放送との関係性といった視聴動向に関するお話などをさせていただきました。その後、配信拠点の地域分散について、チャレンジとその後の効率化へのシフト、また今後の地域IXとの連携などについて、課題感も交えながらお話しさせていただきました。
地域分散という文脈では、キャッシュサーバーを分散配置しただけでは不十分で、分散されたキャッシュサーバーにアクセスを誘導する必要があります。DNSを利用する場合は、DNSサーバーのIPアドレスをキーにして、誘導するキャッシュサーバーを決めますが、IPアドレスだけではISP毎の制御や東阪などの大きな単位でしか制御ができず、どうしてもコントロールできない場面が出てきてしまうことを紹介しました。
その後、AbemaTVの山中さんから、AbemaTVのご紹介、昨今の配信システム構成と品質測定(QoE)について、ご説明いただきました。
山中さんからは、続けて、過去の大規模配信事例をもとにマルチCDNの実装や品質測定による課題を説明いただきました。例として、スポーツイベントなどのリアルタイム性の高いコンテンツについては、地上波放送が行われない地域においてインターネットコンテンツへのアクセスが集中し、視聴品質の低下が起こっている現状も共有いただきました。

会場との意見交換
地域分散や地域IXについて会場から意見をいただきました。地域ISPとしては地域に貢献する取り組みとして、地域Ⅸへの接続が行っていきたいが、中継回線の費用増や冗長化も考えると、コストメリットは薄い。一方で災害対策のためにも地域Ⅸの存続と平時での活用は必須。
より大きな視点では、コンテンツが東京に一極集中してしまっていて、「地方から東京にコンテンツを集めて、東京から配信する」という流れになっているが、「地方から東京に配信する、地方から地方に配信する、そうしないと地方での折り返しのトラヒックが発生しない」という課題も見えてきました。
また、IPアドレスのジオロケーションデータ(そのIPアドレスが、どの地域で利用されているIPアドレスかを紐づけた情報)を用いることで、地域を限定したターゲットマーケティングや広告の出し分け、コンテンツの制御などの活用が行われている事例をお話しました。
地域ISPと協力することで、より正確なジオロケーションデータを集めることができれば、判定ミスの軽減だけでなく、新しい利活用の方向が見えてくるのではないか、という点についても会場と意見交換ができました。
まとめ
放送100年にちなんで、放送とインターネットというプログラムを2件いれましたが、どちらも会場から質問をいただくとともに活発な意見交換をすることができ、ホッとしています。
Jストリームでは、地方へのキャッシュサーバーの展開を行ってきましたが、地域IXとの連携だけでなく、地方のコンテンツを地方から世界に配信する動きを推進できれば、災害時だけでなく平時も活用される新しい形の地方分散が実現できるのではないかと感じました。
また、山中さんとのセッションの中で、コンテンツ配信側とISPの間で何らかのコミュニケーションチャンネルがあれば、両者がWin-Winになる関係性が築けるのではないかと感じました。
JAIPAの集いの中で、地域ISPとコンテンツは配信のよりよい関係を作るにはどうしたらいいか、鳥取での活発な意見交換をもとにJストリームとしても地域分散の次の形、視聴品質の維持と設備の効率化など、新しい視点で考えていきたいと思いました。
【関連情報】
(一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会様公式サイトへリンクします)