大川高志 プラットフォーム本部 技術開発部 アーキテクト
2009年、株式会社ドーガ(のちの合同会社DMM.com)の金沢事業所に入社。マルチデバイス事業部に所属し、テレビやゲーム機などの多様なデバイスに向けた動画配信サービスの構築等を担当。動画配信研究開発リーダー、デジタル配信における開発マネージャーなどを歴任し、2017年、株式会社Jストリームに入社。メディア計案件に関する技術開発組織のマネージメントを経て、社の開発基盤業務に関する責任者としてアーキテクチャーを担当。現在は、VPoE、HRBPとして、Jストリームのエンジニア組織体制整備に従事。
営業出身の石松社長の「エンジニアへのリスペクト」に惹かれて入社を決意
Jストリームに知り合いがいたわけでもなく、転職を考えていた時にたまたまエージェントに紹介された一社がJストリームです。
前職も動画事業を手掛けていたので、Jストリームの存在は知っていたものの、「サービスを組み合わせているだけの会社」という印象を持っていました。当時、Jストリームでは、老朽化したシステムに危機感を募らせ、技術環境の刷新は喫緊の課題でした。実際に面接を受けた時も、経営陣はそれを隠そうともせず「時代に即した技術環境と組織にしたいが、できる人がいないんだ」と相談されました。
誤解を恐れずに言えば、当時はいくつかの会社から内定をもらっていた中で、一番「自分が行かなければまずい会社」がJストリームでした。経営陣が面接の時に「来てもらわないと困ります」と言うまっすぐな目を見て、心から「すごいな」と思ったのです。
経営陣がしっかり現場を見ようとしているし、営業出身の石松社長がエンジニアをリスペクトしているのを感じました。正直、他に内定をもらった会社ではもっといい条件を提示されたところもありましたが、自分が求められている場所で、誰かの役に立てるならと思い入社を決意しました。
Jストリームは、私が入社した当時20周年を迎える会社でした。技術の変化という視点で見ると、それ故に20年分の技術的負債が溜まっている状態でした。20年いる社員にとって働きやすい仕組みにはなっているものの、組織全体を見ると様々な非効率が生まれていました。
例えば、システムを動かすためのマニュアルをもらった時のことです。マニュアル通りにやっても動かないため、他のエンジニアに聞いてみると「マニュアルには書いてないけど、こうやるんだよ」と言われました。手順が変わっても、みんなが知っているからと暗黙知化し、マニュアルを修正していなかったのです。
そのような暗黙知が散見されたのに加え、なぜその手順なのか誰も理由を知らないこともありました。エンジニアにとってその状況は致命的。システムを変更した時に、どこにどのような影響があるかわからなければ何も手をつけられません。結局、下手に修正できないため、言われた通りのことしかできず、システムを改善できない状況でした。
共通言語を作ることで、社内の暗黙知を減らす
まずは、サービスとシステムを分離させ、開発基盤においてインフラのコード化を行いました。フロントやバックエンドの開発エンジニアには、サーバーをビルドするためのコードを自分で書くようにさせました。開発者とインフラエンジニアのコミュニケーションロスをなくすためです。
当時は開発エンジニアがインフラエンジニアに依頼してインフラを構築していたのですが、開発エンジニアの希望通りのインフラができずにお互いに不満がたまっていました。開発エンジニアは「なんで依頼書通りのものができないんだ」、インフラエンジニアは「何のために作るかも分からない。無茶をさせられている」と愚痴をこぼしていました。
その原因は、依頼書ではうまくコミュニケーションできていなかったから。開発者がインフラをビルドするコードを書けば、『コード』という共通言語ができます。コードを見れば、インフラエンジニアも「これだとセキュリティが弱いので、ここを直しておきました」というコミュニケーションがとれます。
共通言語ができたことで、コミュニケーションが円滑になったのです。
暗黙知が減ると、エンジニアがチャレンジしやすくなります。暗黙知が多く、どこを触るとどこに影響するかわからない状態では、開発エンジニアは迂闊にいじれません。システムを触っても問題が起きないのが分かって初めて、開発エンジニアたちは安心して様々な工夫ができるのです。
以前は、どこを触ればどこが動くのか、社歴の長い人しかわかりませんでした。今はコードが読める人なら、自分で調べて分かるようにしています。そのような環境が整って初めて、開発エンジニアたちにひらめきやチャレンジしたい気持ちが生まれてくるのです。
動画の「大容量」「リアルタイム性」
難易度の高いエンジニアリングを日本屈指のレベルで実証する
入社直後は基礎的な技術を学んでもらいます。具体的にはInfrastructure as Codeやコンテナ技術などです。あえて普遍的な技術を使っているので、世の中のトレンドにあわせて開発を勉強している人には、なじみやすい環境だと思います。
土台が固まったら次は特殊性です。つまり、Jストリームならではの技術領域ですね。Jストリームが扱っている動画というのは巨大なデータ量を持ち、かつ時間軸があります。この「大容量性」と「リアルタイム性」はエンジニアリングの難易度トップ3に入るほど難しいものです。加えてJストリームでは日本屈指の大きな案件に数多く携わっています。開発者が担うクリアすべき課題は、どこよりもハードルが高いと言えます。
そうですね。例えば、日本における歴代の大規模配信をはじめ、顧客にはメディアやコンテンツプロバイダー、スポーツやエンターテインメントでの大規模イベント、大手企業なども多いです。誰もが知るような有名イベントや案件では、同時に非常に多くの方が視聴するので、緊張感もひとしおです。
仮に1万人を捌くプラットフォームを設計しても、実際に1万人が同時に視聴する案件でなければ設計の正しさを実証できません。Jストリームならば、最先端かつ大規模な動画配信において、自分の技術が本当に通用するのか試せます。
一生挑戦し続けられるチャレンジングな現場がある
いつまでもチャレンジし続けられる環境があることです。動画市場はものすごい勢いで市場が成長している上に、技術革新が激しく次々と新しい技術が生まれています。4、5年で技術が入れ替わることもよくあることで、常に新しい技術を学び続けなければなりません。
そのため、前述の開発基盤では、モダン開発をベースに必要な部分だけを素早く更新できるようマイクロサービスアーキテクチャを使用しています。小さな機能をたくさん作って連携させることで、開発者にとってチャレンジしやすくかつ開発スピードも高められるようにしています。
Jストリームは動画配信を軸にワンストップでサービス提供することにこだわってきました。ネットワークの物理層からアプリケーション層までかかわり、フロントエンド、バックエンド、インフラ、データ分析など幅広い職種を揃え、サービスを担うプラットフォームを自社で開発・運用しています。開発工程では、各エンジニアが上流から下流工程まですべてを担当します。
Jストリームは20年以上にわたって、時代の波に合わせて成長してきました。常に新しい技術を研究し、開発費を投資しながらサービスを提供しています。その歴史の中で、新しい技術に挑戦する土壌が出来上がっています。
こんなに技術の移り変わりが激しい領域は動画の他にはあまりありません。一度覚えた技術で一生食べていこうという人には向きませんが、常に学びを続けてチャレンジをしていたい人にとっては、望むような環境を用意できるはずです。
そうとは限りません。社内のエンジニアを見ても、もとから動画領域が好きで入社した人はほとんどいません。先に述べたような、常にチャレンジし続ける環境を求めていたら、結局動画領域にいきついた人ばかり。
そのため好奇心の強いエンジニアがほとんどです。エンジニアを『職業』ではなく『生き方』にしている人が多いので、空いた時間があれば仕事でなくてもコードを書いていますし、寝ても覚めても技術のことばかり考えていますね。
望めばいつまでも現場で開発を続けられる環境を用意しています。「技術を覚えたころにマネージャーにされて開発できなくなること」に不満をもっているエンジニアも多いはず。
Jストリームは、エンジニアを対象に新たに『プロフェッショナル人事制度』を導入し、年齢を重ねても現場で開発し続けられる働き方を用意しました。もちろんマネージャーになる道を選んでも構いません。
実はJストリームも、これまでは一定の年齢を超えたらマネジメントをお願いしていました。しかし、辞めていくエンジニアたちの話を聞くと、口を揃えて「次は自分で手を動かせる会社に行きます」と言うのです。
その状況に課題を感じ、エンジニアたちが働きやすい環境を作るため、組織の仕組みを変えました。今の会社で同じ不満を感じているエンジニアは、ぜひJストリームで技術を磨いてほしいですね。
「経営者」と「チャレンジの幅」です。Jストリームの石松社長は営業出身なので、エンジニアリングの詳細な部分については専門外になります。だからこそ、エンジニアを理解しようとしてくれますし、リスペクトがあります。エンジニアの働きやすさを優先してくれるので、経営者との齟齬でストレスを感じることはほとんどありません。
チャレンジに対しても積極的です。Jストリームではベンダーロックインもなく、しがらみにとらわれず時代に応じて最適な技術を調査・選定し、開発できる環境があります。また、実力さえあれば新卒社員が入社半年で一本立ちしたり、数年で開発の中枢を任せるなど年齢を問わない考えが浸透しています。言葉を選ばなければ「節操のない会社」ともいえます。事業に関してもしかりです。今は動画の事業をメインにやっていますが、この先、動画の技術を使って様々な領域にもチャレンジしていくはずです。
経営陣のエンジニアへのリスペクトと、本業が安定し経営基盤があるからこそ、新しいことに挑戦しエンジニアが成長していけるのです。
※本記事は、Wantedlyで公開中のJストリームインタビュー記事の転載です。