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離島から考えるインターネットの未来<br> ~第62回 JAIPAの集い in 奄美大島レポート~

離島から考えるインターネットの未来
~第62回 JAIPAの集い in 奄美大島レポート~

この記事を書いた人

高見澤 信弘

エンジニアリング推進室 アーキテクト

Jストリームに新卒で入社後、ネットワークエンジニアとして自社のデータセンターや対外接続のネットワーク、大規模配信を可能にするCDN(Content Delivery Network)の設計・構築を担当。その後、テレビ番組の動画配信システム(見逃し配信システム)の構築や、世界的スポーツイベントなどの動画配信設計を手がける。現在はCDNのプロダクト企画や会社全体のネットワーク設計などを行う。主にインフラを担当している

奄美大島で開催された「第62回JAIPAの集い」

 

10/15(木)、16(金)の二日間、一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会様の主催による「第62回JAIPAの集い in 奄美大島」が鹿児島県奄美市名瀬町のアマホームPLAZA(奄美市市民交流センター)で行われました。

 

「JAIPAの集い」は、インターネットサービスプロバイダー(以下、ISP)や通信事業者をはじめ、インターネットに携わる事業者が一堂に会し、技術や業界動向について情報交換を行う場です。

第62回JAIPAの集いin奄美大島 開催案内 | Topics | JAIPA – 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会


今回は、268名(学校関係者110名含む)もの方々が参加し、地元バス会社(しまバス)でのバスロケーションシステムの構築と導入の苦労話、海底ケーブルの陸揚げ局の紹介(第2弾!)、IoTデバイスを使ったスマート農業の実際の話、MVNO市場の変化や最新状況など、今回も幅広い分野から講演がありました。その中で、アーキテクトの高見澤がプログラム委員として参加しましたので、気になったプログラムを2つ紹介します。

 

 

プログラム紹介1:「家庭用ルータの最新動向と保守切れルータ対策への取組」

 

保守が切れた家庭用ブロードバンドルーターは、脆弱性があってもファームウェアの保守が行われてないため、脆弱性が改修されず、攻撃者に悪用されてる事例が発生しています。特に家庭用ルーター内に不正な中継プログラムが仕込まれ、「レジデンシャルプロキシ」として悪用される事例が多く発生しています。

 

例えば、攻撃者が家庭用ルーターを中継して企業や政府機関へ攻撃が行われる事例やネットバンキング利用時に攻撃者が作った偽サイトに誘導されIDとパスワード等を盗まれ不正送金が行われた事例などが紹介されました。この問題については、総務省や警察庁からも注意喚起が行われています。


対策として、家庭用ブロードバンドルーターメーカーが協力し、初期パスワードの個別化、パスワードを何度も間違った際に一定時間ログインをブロックし総当り攻撃を防ぐロックアウト機能、脆弱性に対応するための自動的ファームウェアアップデートなどが行われています。

 

また、ルーターメーカーだけでなくISPが協力することで、サポートが切れた家庭用ブロードバンドルーターの入れ替えについて啓蒙を行っています。

 

このような状況で、IoT機器の安全性についてレベル別に認定したJC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)が運用されています。ルーターは5年程度がサポート期間となるため、定期的にリプレースする必要があります。新しいルーターを購入する際は、これらの規格に適合したルーターを購入されることをおすすめします。

 

家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシ:警察庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/cyber/notes/iot.html


家庭用IoT機器を悪用するレジデンシャルプロキシの対策について(提言)」(案)に対する意見募集の結果及び提言の公表:総務省
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01cyber01_02000001_00305.html

 

セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)
https://www.ipa.go.jp/security/jc-star/index.html

 

 

プログラム紹介2:島の学生向け『超解説!インターネットのお仕事』


このプログラムは「インターネットに関わる仕事について、奄美大島の高校生や専門学校生にぜひ知って欲しい」というプログラム委員からの提案もあり、「JAIPAの集い」としては珍しく、奄美情報処理専門学校と地元奄美市の中学校の学生さんも聴講していただくプログラムとなりました。モデレーターは、Jストリームとは関係の深いQUNOG(きゅうのぐ/九州沖縄ネットワーク・オペレーターズ・グループ)お手伝い係/株式会社シナプスの芝村さんです。

 

ネットワークに係る人材の確保についての話題は、昨今いろいろな方面で問題となっており、地域NOGやJANOGでもプログラムとして議論が行われていると思います。「JAIPAの集い」でも話題にしてきましたが、特に印象的だったのが、プログラムの相談の際に奄美大島の方がおっしゃっていた「奄美大島には大学がないので『奄美情報処理専門学校』しか、ITに関する高等教育を実施している教育機関がない」という事情です。


そのため、島の中でITやネットワークについて、理解が深い人材が減ってしまうと島内の活力失われてしまう。「JAIPAの集い」を通してネットワークに関わる仕事を知ってもらい、島内でITやネットワークに係る人材を確保したいという、他の地域とは異なる奄美大島の事情だなと思いました。

 

プログラムは、芝村さんからのインターネットの仕組みを無線ネットワークや携帯電話網などと関連させた解説があり、その後にインターネットに関わる仕事としてネットワーク間の相互接続やコントロールを担うBGPオペレーションと災害時に各社が協力して取り組むインフラ(特に回線)の復旧作業について紹介がありました。会場に参加された学生さんからは「島にはどのようにインターネット回線が届いているの?」「スターリンクのような衛星を使ったインターネット接続はどのような仕組みなの?」といった質問も飛び交い、海底ケーブルの話や衛星通信の話まで話題が広がりました。

 

シナプス・芝村氏からは、島の学生向けにインターネット技術に関する解説が行われた

 

またこのプログラムは、「現地参加できなかった高校生にも聴いてもらいたい」ということで、「JAIPAの集い」では珍しく、配信先を限定してインターネット中継しました。Jストリームでは、このインターネット中継のために自社の動画プラットフォームであるJ-Stream EquipMedia(ジェイストリーム・イクイップメディア、以下EQ)を提供しています。ライブ配信は、地理的や制約を受けることなく学習機会を広げる有効な手段でることを改めて実感しました。

 

 

島の高校生向けライブ配信の仕組み

 

配信する映像は、発表者のスライドと会場で話している話者を会場奥から撮影したカメラ映像を合成して制作しました。ビデオスイッチャーから分岐した発表者のスライドと映像をSDIに変換しエンコーダーに入力。また音声は会場PAからのアウトとビデオスイッチャーから発表資料に含まれる音声をミキサーで調整し、エンコーダーに入力しました。会場奥からのカメラ映像もSDIに変換し長距離を伝送し、エンコーダーに入力しています。


これらの映像と音声をエンコーダーで合成、エンコードし、EQにアップロードしています。EQではエンコーダーから入力された映像をブラウザで視聴できる動画形式に変換し、CDNを通して視聴者に配信しています。視聴にはEQの機能であるIDとパスワードをかけています。

 

今回のライブ配信構成図
機材が並ぶ配信卓の様子

JAIPAの集いを通して感じた動画の可能性について


今回、このような仕組みでインターネットライブを実施してみて、島内の方からもいい意味で反響をいただきいました。「JAIPAの集い」では学生さんや若手社会人向けのプログラムを企画することはあるのですが、実際に会場に足を運んでもらうとなると、スケジュールだったり交通費だったり、少なからずハードルが高いと感じています。


このように一部のプログラムについてインターネットライブを行うことで、インターネット業界に興味ある方々にリーチできる可能性が高まるのではないかと思いました。今後もプログラムによっては検討できたらいいなと思っています。