Technology

プロダクト開発の舞台裏や
使用している技術の話

年間2,600件のライブ配信を支えるライブエンジニアの醍醐味

年間2,600件のライブ配信を支えるライブエンジニアの醍醐味

この記事に登場する人

T.H.

ライブディレクター(中途入社・7年目)
大学時代より、地域の商店街のプロモーションや、市役所の広報ビデオなどの映像制作に取り組む。前職でインターネット放送局のコンサルティングに関わり、インターネットを通じた情報発信に興味を持つ。中途採用でJストリームに入社後は、ライブエンジニア、研究開発職を経験。現在はディレクターとしてお客様の情報発信のサポートに従事する傍ら、NDIやSRT等の最新の映像伝送技術の取得に取り組んでいる。

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K.N.

開発エンジニア(新卒入社・5年目)
ネットワークと動画に興味を持ち、Jストリームにライブエンジニアとして新卒入社。その後ディレクターに転向し、お客様の要望に応えるため奔走。その中で動画配信の仕組みについてより深く知りたいと考え、インフラ・開発職へ異動。今では運用業務を行いながらシステムについて学びつつ、裏側からライブサービスのサポートに従事。最近は自社の共通開発基盤であるJ-Stream Cloudの運用にも携わるようになり、自分が初めて知る技術ばかりで混乱しつつも楽しく学んでいます!

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Y.I.

ライブディレクター(新卒入社・4年目)
大学時代より、ネットワーク関連の研究に取り組み、CDNというコンテンツ配信を効率化するネットワークを独自で持つJストリームに興味を持ち入社。ライブエンジニアとして新卒入社し4年目。入社当初は現場機材に関するノウハウはほとんどなかったが、先輩エンジニア指導のもと、各種機材の操作方法や現場オペレーションの基本的知識を身に着け、今ではライブ現場を飛び回っている。その他にも、新規案件のディレクションや、自社の新ライブプレイヤーの要件定義など様々なプロジェクトに関わる。

IntstagramやTikTokをはじめ、いまはスマホアプリでも簡単にライブ配信ができる時代。

Jストリームでは1997年の創業時から企業向けにライブ配信サービスを提供しているが、そこではライブエンジニアという存在が重要な役割を担っている。今回はライブエンジニアの役割と仕事の魅力、現場でのこだわりについて、ライブに魅了された三人のエンジニアに語ってもらった。

同時14会場、Zoom連携、海外中継…
デジタルマーケティングシフトでビジネス向けライブは高度化・複雑化

――今日はライブエンジニアに関するインタビューです。コロナ禍の影響もあり、ビジネスシーンでもインターネットライブの活用が急拡大しています。まずは、Jストリームにおけるライブエンジニアの業務内容を教えてください。
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Y.I.

ライブエンジニアは、ライブ配信にかかわる技術周り全般を担い、大きく3つの業務があります。

 

一つ目はオペレーション業務です。図1はJストリームのライブ配信サービスの全体像です。この図でご説明しますと、ライブエンジニアは、ライブ現場で映像や音声ソースを受け取りエンコードし、ストリーミング配信するためのデータ転送部分を担います。

 

具体的には、必要な機材や会場設営を含めた環境手配、サーバ設定、エンコーディング、サーバへのデータアップロードなどです。映像ソースは一会場からの場合もあれば、複数の会場から受け取り、切り替えながら配信することもあります。

 
【図1】Jストリームライブ配信サービスの全体像
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Y.I.

二つ目は、仕様策定業務です。お客様や営業・ライブディレクターから挙げられた新規性の高い要望に対して技術的仕様や解決方法を考え、確定させます。

 

三つ目の業務が、新技術への対応です。これには自社のライブサービスに付随した検証も含みます。

――最近ではどんな現場があるのですか?
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T.H.

エンターテインメントのイメージが強いインターネットライブですが、実は、ビジネス系での活用は非常に多いんです。Jストリームで一番多いのは医薬業界での講演会です。医薬業界でのデジタルマーケティングシフトのなかで、ライブ講演会は重要なコンテンツのひとつになっています。

 

医薬業界では、遠隔操作で複数の病院の手術室と会場を結び配信するような事例もあります。また先日は、医学系学会の総会で最大14会場分のライブ配信の現場を担当しました。私は、現場統括として、パートナー企業さんにも協力いただきながら、すべての会場のプログラムを滞りなくライブ配信できるようディレクションを行いました。

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K.N.

ライブ配信と一言で言っても、現場の様子は一律ではありません。会場はホテルや会議場、スタジオなど様々ですし、海外出張して対応することもあります。

 

全国各地をZoomやTeamsなどを使い全国各地をつなぐような案件も増えているんですよ。

年間2,600件の実績をもとに日々強化を続ける「失敗しないライブ」体制

――ライブ現場対応を手掛ける会社さんは数多くあります。Jストリームならではの強みや特徴はどこでしょうか。
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Y.I.

一言で表現するならば「失敗しないライブ」のための体制と環境を社内で完結させていることです。3つの特徴をあげて、もう少し詳しくご説明したいと思います。

 

まず最初に挙げる特徴は、ライブ現場対応だけではなく自社構築したインフラを保有していることです。JストリームではCDN(Content Delivery Network)というネットワークのコンテンツ配信を最適化できるインフラを持っています。大型のライブや、SNSなどで瞬間風速的にアクセス集中する状況に対しても、CDNを活用することでサーバをダウンさせることなく、スムーズなライブ配信を続けることができます。自社でCDNを構築している企業は、全国でも数少ないです。

 

ライブエンジニアはインフラ構築した自社のエンジニアと直接相談したり、質問をしたりして、確実に必要な設定を行います。「ライブ現場は完璧だったが、視聴トラブルが起きた。どうもインフラに問題が発生したようだがよくわからない」――実は、こういう例は少なからずあります。しかし、Jストリームならばライブ配信全体フローのどこに原因があるのかを究明して、スピード感を持って解決することができます。

 

次に、社内に幅広い領域のエンジニアがいることです。私たちライブエンジニアのほかに、動画技術、フロントエンド、バックエンド、インフラ、ログ解析をはじめとしたさまざまな専門家がいます。そのため、難易度の高い案件や新規性の高い案件であってもスムーズに社内で連携して対応することが可能です。

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T.H.

三つ目の特徴としては、膨大な実績に基づくノウハウです。

 

20年以上にわたって積み重ねられたライブ現場で「失敗しないための」ノウハウをまとめ、組織として安定した品質を維持できるようにしています。実績には、世の中の誰もが知るような国際的なイベントや、前例のない案件も多数含まれています。

 

Jストリームでは、現在、年間2,600件以上のライブ配信実績があります。私が中途入社した時に一番驚いたのはそこでした。扱う案件の大きさと数の桁が違うなと。そこから得られる経験とノウハウは貴重な会社の財産です。Jストリーム全体での実績と一人の経験値では、比べ物になりません。

 

お客様がJストリームをご用命いただく大きな理由のひとつが、「ライブ配信を落とさない、途切れさせない」ということです。その期待に応え、どんな大規模な案件であろうと、複雑な現場であろうと、確実にライブ配信できる仕様に落とし「失敗させない」ことは、実はとても高度なことだと自負しています。

――話をうかがうと、ライブエンジニアには現場対応に関すること以外にも幅広い知識が必要そうですね。
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Y.I.

そうですね。ライブの現場に関することだけでなく、その裏側のインフラ部分や開発に関する幅広い知識が求められますね。海外も含むような案件では、自社CDNと海外パートナーのインフラと連携するようなこともあります。特殊な案件や大規模な配信については、インフラエンジニアと相談しながら必要なネットワークの手配も行います。

 

お客様と直接対面しているエンジニアは私たちライブエンジニアですから、責任は重大です。前例がないケースを含め難易度の高い現場が多いですから、きっちり詰めて形に確実に進めていくことが必要です。

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T.H.

配信となると、抑えるべきポイントは映像作りだけではないですしね。

 

ただし、「ネットワークや開発の知識はない」という方も、心配する必要はないと思います。実際、私もそうでした。後述しますが、マニュアルや教育フロー、ノウハウ共有も頻繁に更新しており、20年以上のノウハウが蓄積されています。

 

育成スピードもあがってきており、実力をつけて若いうちから大手企業の案件を手掛けるチャンスもたくさんあります。Jストリームには、制作会社やイベント会社からの転職組も多いんですよ。

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K.N.

ライブ配信はまだまだ成長領域ですから、映像やイベントというコンテンツのところだけの現場経験ではなく、インフラへの理解があることは、キャリア面においても価値ある経験だと思います。

ライブを極めるほか、インフラや開発など幅広いキャリアパスを歩める環境

――キャリアの話も出てきましたので、詳しくうかがっていきたいと思います。ライブエンジニアでの経験を経て、その後のキャリアパスにはどのような選択肢があるのでしょうか。
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Y.I.

大きくは、ライブのプロデュースへ進む方向性と、開発へジョブチェンジする方向性がありますね。開発へのジョブチェンジは、同業他社ではなかなかないJストリームのユニークなところかもしれません。

 

ご紹介しましたように、Jストリームには幅広いエンジニア職種がありますので、インフラ部門へ異動したり、バックエンドやフロントエンドエンジニアとして開発部門での経験を積むことも可能です。

――ジョブチェンジは、特殊なことではないんですか?
K.N.顔写真
K.N.

ジョブチェンジについては、組織も可能な限り柔軟に考えてくれています。

 

実は、私は新卒入社でライブエンジニアからライブディレクターになり計3年したところで、2020年よりインフラ部門へジョブチェンジしています。

 

ライブ現場担当としてインフラ部門とやりとりする中でサーバ設定などに興味を持ち、自分のキャリアの幅を広げたいと異動願いを出しました。

ライブ現場を経て現在は開発エンジニアとしてキャリアを積んでいる
T.H.顔写真
T.H.

私は、中途入社で5年間、ライブエンジニアとライブディレクターを経験し、1年間開発部門へ異動しました。ジョブ型で採用されたので、正直、よく行かせてもらえたなと思いました。

 

異動を希望したきっかけは、現場を進めるうえでお客様から新しい技術要素への相談を受け、開発部門への問い合わせが増えたことでした。問い合わせ先の開発部門では、回答にしても、仕様にしても万全の用意をしてくれるわけです。でも「用意されたものに乗っかっているだけなのでは」という気持ちが強くなり、それでは自信が持てないなと、開発への異動を決意しました。

――異動は、せっかく積んだ知識や経験を手放す損失だとは思いませんでしたか?
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T.H.

むしろプラスです。

ライブエンジニア業務範疇ではDockerやKubernetesを触ることも知ることもありません。Jストリームでは、モダン開発への移行を進めており、動画に限定せず、世の中のトレンドに沿った標準的な技術での開発経験を積むことができます。開発のトレンドがわかると、それをライブに応用したり、ライブ現場での問題解決のヒントにすることができます。

 

 

実は、私は開発経験を経てその後、再度ライブ現場へ戻ってきました。開発部門業務を行っているなかで、「作りたいもの」よりも「使えるもの」という意識が強い自分に気が付きまして。機材や会場の環境など今ある状況を、目的に沿って最大限機能させるためにはどう活用するかーーこれは、ライブ現場対応で目の前のお客様の声を直接うかがうなかで培った、自分らしいユーザー視点なんだと思いました。「自分は、お客様の前に立って、案件をプロデュースしていくのが好きで楽しいんだな」と再認識したんです。

――ライブ現場での経験をもとに、それぞれがJストリームという環境を生かしてキャリアの幅を広げているんですね。

お客様の大切な1件1件のライブのために、組織も個人も変革の時に

――さて、前編最後では、ライブエンジニアの未来について伺いたいと思います。Jストリームのライブエンジニアの3年後はどうなっていると思いますか?
Y.I.顔写真
Y.I.

現状のライブ案件には2種類の現場があります。

ひとつは仕様が定型化され運用比重が高い現場、そしてもうひとつは新規性が高く仕様策定の比重が高い現場です。

 

前者については、より多くの需要に応えられるよう、すでにパートナー企業との連携を含め進めています。ここでのJストリームのライブエンジニアの役割としては、プロデュース側に近くなります。

後者については、ライブ配信業界における「DIT」のような役割ですね。

T.H.顔写真
T.H.

映像業界では、DIT(Digital imaging technician)という職業があります。映像制作の風上から風下まで全部をコンサルティングするような役割です。数多くの実績のあるJストリームならばライブ配信業界におけるDITの立場を担えると考えています。

 

多様化・高度化する案件に対して、目的やコンテンツに最適なエンコーダーや構成、プレーヤー選択等を行い、新規性の高い案件ニーズに的確に応えていければと思います。

K.N.顔写真
K.N.

新規性の高い案件で得た知見をマニュアル化して汎用的なものにしていったり、新機能やサービス開発を手掛け新たなサービス提供へつなげていく。前者と後者がうまく循環していくことで、お客様にとってライブコミュニケーションが、より便利で、身近なものになるといいですね。

 

ライブ需要の増大で、Jストリームとして多くのライブ現場ニーズにお応えするためには、ライブエンジニアの立ち位置も変わらざるを得ません。

 

まだないライブエンジニアの新しい形を自分たちが一から定義して、開拓し、形にしていく途中ですので、「こんな未来を作りたい」という方にはぜひ仲間に加わっていただきたいですね。

――言葉のはしばしから、「皆さん、ライブが好きなんだな」という空気が伝わってきます。
Y.I.顔写真
Y.I.

好きですね。自分が配信した映像や音声をお客様が確認され、リアクションを直接目の当たりにすると、やはりライブエンジニアの仕事はいいな、楽しいなと再認識します。

T.H.顔写真
T.H.

ライブ当日、現場へ到着すると、最初はお客様も緊張されていて、「無事終わるかな」と心配されていることもあります。

 

お客様の心配を払拭できるように、1件1件の現場について深く考えて仕様に落とし、計画を立て、動く。

 

終わった後は、お客様がそれこそネクタイを緩めたり、ジャケットを脱いだりして、リラックスした雰囲気で「ありがとうございました」と会場を後にされる姿を見られるのは喜びですね。

 

年間2,600件なんて言っていますが、ひとつひとつがお客様の大事なライブです。これからもひとつひとつを確実に、精度高く対応していきます。

――後編では、スケジュールや体制、ナレッジ共有、普段のコミュニケーションなど、具体的な働き方についてうかがいたいと思います。ありがとうございました